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食物アレルギー

食物アレルギーとは、特定の食べ物を口にした際に、体が外敵と誤認して過剰に免疫反応を起こしてしまう状態のことです。食物アレルギーは単に「食べられない」という制限だけでなく、ご家族の不安や食生活の悩みにも深く関わる疾患です。以前は「アレルギーが出るものは一切食べない」という完全除去が主流でしたが、近年の医学では、適切な診断のもとで可能な限り早い段階から少量を摂取し続けることで、将来的に食べられるように導く考え方が重要視されています。

食物アレルギーの症状について

食物アレルギーの症状は、食べてから数分から2時間以内に現れる即時型反応が一般的です。最も多く見られるのは皮膚の症状ですが、呼吸器や消化器、さらには全身に影響が及ぶこともあります。

皮膚に現れる症状

最も頻度が高い症状です。顔や体に赤い湿疹や蕁麻疹(じんましん)が出たり、皮膚が赤く腫れたりします。強い痒みを伴うことが多く、こどもが不機嫌になったり、皮膚を掻きむしってしまったりすることがあります。目のかゆみや充血、まぶたの腫れ、唇が大きく腫れるといった症状も皮膚粘膜症状の一つです。

呼吸器に現れる症状

注意が必要な症状です。鼻水や鼻詰まり、くしゃみといった軽いものから、咳が止まらなくなったり、喉が締め付けられるような違和感を訴えたりすることもあります。さらに症状が進むと、喘息のようなゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴ぜんめい)が聞こえ、息苦しさを感じるようになります。呼吸器の症状は急激に悪化する可能性があるため、すぐに受診をしてください。

消化器に現れる症状

食べてから数十分から数時間後に、腹痛を訴えたり、激しく嘔吐したりすることがあります。また、下痢や血便が見られることもあります。乳幼児の場合は言葉で痛みを伝えられないため、激しく泣き続ける、顔色が悪くなるといったサインがみられます。

アナフィラキシーと全身症状

複数の臓器にまたがって強い症状が出る状態をアナフィラキシーと呼びます。さらに、血圧が低下して意識が朦朧としたり、ぐったりしたりするショック状態に陥ることをアナフィラキシーショックと言います。これは命に関わる緊急事態ですので、迅速な医療機関への受診や、処方されている場合は自己注射薬(エピペン)の使用が必要です。

食物アレルギーの原因について

食物アレルギーの原因となる食べ物は、年齢やライフステージによって変化していくのが特徴です。

乳児期に多い原因食物

離乳食が始まる時期に最も多いのは鶏卵です。特に卵白に対して反応することが多く、アレルギー全体の半数近くを占めることもあります。次に多いのが牛乳、そして小麦です。これら3つは「三大原因食物」と呼ばれています。その他にも、大豆などが原因になることがあります。

幼児期から学童期に多い原因食物

成長とともに、魚類甲殻類(エビやカニ)、果物などへの反応が増えていきます。また、近年特に増加しているのがナッツ類です。クルミやカシューナッツ、アーモンドなどは、少量でも強いアレルギー反応を引き起こしやすいため、注意が必要です。そばやピーナッツも、一度発症すると耐性(食べられるようになる力)がつきにくい傾向があります。

食物アレルギーの原因が決まる仕組み

アレルギーは、体内の免疫システムが特定のタンパク質を異物と認識することで起こります。かつては口から入ることで発症すると考えられていましたが、最近の研究では、荒れた皮膚から成分が入り込む「経皮感作」が発症の大きな原因であることがわかってきました。そのため、赤ちゃんの頃からスキンケアをしっかり行い、湿疹を治療しておくことが食物アレルギー予防には非常に重要です。

食物アレルギーの病気の種類について

食物アレルギーと言っても、症状の出方や時期によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を行うことが、適切な治療への第一歩となります。

即時型食物アレルギー

最も一般的なタイプです。食後すぐに、あるいは1時間から2時間以内に蕁麻疹や咳などの症状が出ます。多くの方がイメージする「食物アレルギー」はこれに該当します。血液検査(IgE抗体)や皮膚プリックテストで反応が出やすいのが特徴です。IgG抗体の測定を促している医療機関もありますが、IgG抗体は診断にはあまり有用でないことがわかっていますので注意してください。

口腔アレルギー症候群(OAS)

特定の果物や野菜を口にした際、口の中や喉にかゆみ、イガイガ感、腫れが生じるものです。これは花粉症と密接に関係しており、花粉のアレルゲンと果物のタンパク質の構造が似ているために起こります。例えば、シラカバ花粉症の人がリンゴや桃を食べた時に症状が出ることがあります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

特定の食べ物を食べただけでは症状が出ないものの、その後に激しい運動を組み合わせることで強いアレルギー症状やアナフィラキシーを引き起こす珍しいタイプです。中学生や高校生など、活発に活動する世代に見られることがあります。給食後の体育の授業やスポーツを頑張っているこどもたちは注意が必要です。

新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)

生後間もない赤ちゃんが、粉ミルクや母乳に含まれるタンパク質に対して反応し、激しい嘔吐や下痢、血便を引き起こす病気です。通常の即時型とは異なり、食後数時間経ってから症状が出るため、診断が難しい場合があります。繰り返す嘔吐や下痢で体重が増えない、顔色が悪いなどの症状が続く場合は、早めに相談してください。

食物アレルギーの治療法について

当院ではお子さんの将来を見据えた治療方針を提案しています。昔のような「完全除去」から、現在は必要最小限の除去、そして経口免疫療法へと治療の考え方がシフトしています。

正しい診断と問診

まずは、いつ、何を、どのくらい食べて、どのような症状が出たのかを詳しく伺います。検査データ(血液検査など)だけで「この数値が高いから除去」と決めることはありません。検査結果が陽性であっても、実際には食べられるケースも多いため、正確な診断が何よりも大切です。

必要最小限の除去

症状が出ないことが確認できている量は、積極的に食べていくことを推奨しています。例えば、加熱した卵であれば食べられる場合は、完全に除去せず、加熱卵を少しずつ食べていくことで、将来的な寛解(症状が落ち着いて普通に過ごせるようになること)を目指します。自己判断での摂取は危険ですので、必ず医師の指導のもとで進めましょう。

食物経口負荷試験

実際に疑わしい食べ物を、病院で少量ずつ食べてみて、症状が出るかどうかを確認する検査です。これが最も信頼できる診断方法です。当院で実施可能か、あるいは高度な医療設備を持つ病院をご紹介するかは、お子さんの状態に合わせて判断します。診断がつくことで「意外と食べられる」ことがわかり、家族の負担が軽くなることも多いです。

薬物療法と緊急時の対応

症状を抑えるために抗ヒスタミン薬を処方したり、喘息症状がある場合は吸入薬を使用したりします。また、重篤な症状が出る可能性があるお子さんには、緊急時のためのエピペン(アドレナリン自己注射)を処方し、使い方を丁寧に指導します。学校や幼稚園での対応についても、生活管理指導表の作成を通じて連携を図ります。

食物アレルギーについてのよくある質問

Q1. 血液検査で陽性が出ましたが、もう一生食べられないのでしょうか?

A1. いいえ、そんなことはありません。血液検査の結果はあくまで「感作(アレルギーの準備状態)」を示しているだけで、実際に症状が出るかどうかとは別です。成長とともに消化機能が発達し、多くのお子さんが小学校に上がる頃には食べられるようになります。当院では定期的に検査を行い、食べられる範囲を広げるお手伝いをします。

Q2. 離乳食を遅らせたほうがアレルギーになりにくいですか?

A2. 現在の研究では、特定の食べ物の開始を遅らせても、アレルギーの予防にはつながらないことがわかっています。むしろ、適切な時期(生後5ヶ月から6ヶ月頃)に離乳食を開始し、多種多様な食材に触れることが推奨されています。皮膚のバリア機能を整えながら進めることが大切ですので、湿疹がある場合は先にそちらを治しましょう。

Q3. 家族にアレルギー体質がいなければ、安心ですか?

A3. ご家族にアレルギーがなくても、食物アレルギーを発症することはあります。遺伝的な要素はゼロではありませんが、環境や皮膚の状態なども大きく関わります。「うちは大丈夫だと思っていた」と驚かれる保護者の方もおられます。

Q4. 検査で「陰性」なら、アレルギーの可能性は完全に否定されますか?

A4. 血液検査で陰性であっても、症状が出る場合はあります(否定-病名がないと言い切ること-ができないケースもあります)。逆に陽性でも食べられることもあります。最も大切なのは「実際に食べた時の症状」です。検査数値に振り回されすぎず、臨床経過を重視して診察を行っていきます。

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