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夜尿症

夜尿症とは、5歳を過ぎても睡眠中に無意識に排尿してしまう状態が続く疾患です。一般的には「おねしょ」と呼ばれ、成長とともに自然と良くなることも多いですが、宿泊行事を控えて不安を感じるお子様や、毎日の洗濯などで悩まれる保護者の方も少なくありません。夜尿症はお子様の性格や育て方が原因ではなく、身体の成長段階におけるホルモン分泌や膀胱の働きのアンバランスによって起こる医学的な病気です。

夜尿症の症状について

夜尿症は、一般的には幼児期のおねしょの延長と考えられがちですが、医学的には明確な定義が存在します。年齢や頻度によって適切な対応や治療が必要となる場合があります。

夜尿症の定義と受診の目安

日本夜尿症学会のガイドラインでは、5歳以降で月1回以上の夜尿が3か月以上続く状態を夜尿症と定義しています。幼児期における夜間の排尿は自然な発達過程ですが、5歳を過ぎて頻繁におねしょが続く場合は、医療機関への相談が推奨されます。

特に以下のような様子が見られる場合は、小児科での相談をご検討ください。

  • 5歳を過ぎても週に数回以上のおねしょが続いている
  • 小学生になっても夜尿が治まる気配がない
  • お泊まり保育や修学旅行などの宿泊行事が近づいて心配である
  • 日中にも急な尿意を我慢できずにおもらしをしてしまう
  • 一度おねしょが完全になくなっていたのに再び毎晩のように出るようになった

夜尿症に伴いやすい日常の様子

夜尿症のお子様は、朝起きた時に布団が濡れていることに対して強いショックや罪悪感を抱きやすい傾向があります。また、熟睡していて尿意で目が覚めない、朝起きるのが苦手であるといった睡眠に関連する様子が見られることも珍しくありません。

日中の頻尿(トイレに行く回数が多い)や便秘を合併しているケースも多く、これらを一緒に整えていくことが夜尿の改善に向けた大切な手がかりとなります。

夜尿症の原因について

夜尿症が起こる背景には、単一の要因だけでなく、複数の身体の発達要素や生活習慣が関係しています。決して保護者のしつけ不足や、お子様の怠慢が原因ではありません。

夜間の尿量が多い(抗利尿ホルモンの分泌不足)

通常、人間は睡眠中に抗利尿ホルモンという尿量を減らすホルモンが多く分泌され、夜間に作られる尿の量が少なくなります。しかし、このホルモンの夜間分泌のリズムが十分に成熟していないと、寝ている間も昼間と同じように大量の尿が作られてしまい、布団を濡らす原因となります。

膀胱に尿を十分にためられない(膀胱容量の未熟さ)

夜間に作られた尿を朝まで溜めておくための膀胱の容量が十分に育っていない、あるいは睡眠中に膀胱が過剰に勝手に縮んでしまうことがあります。膀胱の受け皿が小さいために、少ない尿量であってもあふれ出てしまう状態です。

睡眠と覚醒のバランス(尿意で起きられない)

膀胱に尿が満杯になると、脳へ信号が送られて目を覚ます仕組みが備わっています。しかし夜尿症のお子様は、眠りが深く尿意を感じても目を覚ますことが難しい状態(覚醒障害)にあります。起こそうとしてもなかなか起きられないのは、この覚醒の仕組みが未熟であるためです。

生活習慣や心理的ストレスの影響

夕方以降の過剰な水分摂取、塩分や糖分の多い食事、冷え、不規則な睡眠リズムなどの生活習慣は、夜尿を悪化させるリスク因子-発症や悪化に関わる要素-となります。また、環境の変化や宿泊行事への不安といった心理的ストレスが引き金となって一時的に症状が目立つこともあります。

夜尿症の病気の種類について

夜尿症はその原因や特徴によって主に3つの病型に分類されます。適切な治療を進めるためには、お子様がどのタイプに当てはまるのかを見極めることが重要です。

多尿型夜尿症

夜間に分泌される抗利尿ホルモンが不足し、寝ている間に作られる尿の量が膀胱の容量を超えてしまうタイプです。尿の量自体が多いため、朝起きた時のおねしょの量が多く、パジャマやシーツが広範囲に濡れる傾向があります。

膀胱型夜尿症

夜間の尿量は正常範囲内であるものの、膀胱の働きが未熟で尿を十分にためておけないタイプです。1回に出る尿量はそれほど多くありませんが、一晩に何度も夜尿をしてしまうことがあります。日中にも急な尿意を感じたり、トイレの回数が多かったりするお子様に多く見られます。

混合型夜尿症

多尿型と膀胱型の両方の特徴を併せ持っているタイプです。夜間の尿量が多く、さらに膀胱にためられる量も少ないため、重症化しやすい傾向があります。生活改善やお薬の組み合わせなどを丁寧に進めていく必要があります。

単一症候性と非単一症候性の違い

夜尿症は日中の排尿トラブルの有無によっても分類されます。

  • 単一症候性夜尿症・・日中のおもらしや頻尿などの排尿トラブルがなく、睡眠中の夜尿のみがみられる状態
  • 非単一症候性夜尿症・・夜尿に加えて、日中のおもらし、頻尿、強い我慢、便秘などの排尿・排便トラブルを伴う状態

非単一症候性の場合は、まず日中の排尿や便秘の治療を優先して行うことで、夜尿がスムーズに改善することがあります。

夜尿症の治療法について

当院における夜尿症の治療は、生活習慣の改善を基本とし薬物療法やアラーム療法を指導しています。

①生活指導(基本の生活改善)

治療の第一歩は、ご家庭での生活習慣を整えることです。これだけでも約2割から3割のお子様で夜尿の改善が期待できます。

  • 夕食から就寝までの時間を3時間以上あける
  • 夕方以降の水分や塩分の摂取を控えめにする(日中はしっかり水分補給を行う)
  • 就寝前に必ずトイレに行く習慣をつける
  • 身体や足元を冷やさないようにする
  • 便秘があれば便秘の治療をまず行う
  • 夜中に無理に起こしてトイレに連れて行かない(睡眠リズムを乱すため)

②抗利尿ホルモン薬による薬物療法

寝る前に尿を作るのを抑制するホルモンを補充する治療法です。抗利尿ホルモンは口の中で錠剤を溶かして服用しますので、錠剤が丸呑みできないお子さんでも使用できます。投薬時には「水中毒」という特殊な副作用の発現に注意する必要があるため、医師より十分に説明を受けた上で使用していただきます。

③アラーム療法(夜尿アラーム)

パンツに小さなセンサーを取り付け、尿で濡れた瞬間に音や振動で知らせる装置を用いた治療法です。尿が出た瞬間に起きる訓練を繰り返すことで、睡眠中に膀胱に尿をためられる容量を増やし、尿意で自然に目が覚めるように促します。膀胱型や混合型のお子様に適した方法です。当院ではピスコールを用いたアラーム療法をおすすめしています。

 

これらの治療で十分な効果が得られない場合には下記の治療を行うことがあります。有効性が認められないときは専門施設への紹介をさせていただきます。

  • 抗コリン薬・・膀胱の緊張を和らげて尿をためやすくするお薬で、主に膀胱型に用いられます
  • 漢方薬や三環系抗うつ薬・・状態に応じて補助的に処方されることがあります

夜尿症と発達や生活リズムの乱れには強い相関関係があります。「こどものこと外来」のページでも幅広くご相談をお受けしています。

夜尿症についてのよくある質問

Q1. 宿泊行事(修学旅行や「うみのこ」)が近いのですが相談できますか?

A1. はい、可能です。宿泊行事の数か月前からご相談いただければ、一時的にお薬を使って夜尿を抑える計画や、当日の服薬調整などを丁寧に行います。直前であってもできるサポートがありますので、早めの受診をおすすめします。

Q2. 叱ってはいけないと聞きますが、どう接すればよいでしょうか?

A2. 夜尿症は本人の意志でコントロールできるものではありません。「焦らない・怒らない・褒める」の3原則を大切にしてください。濡れなかった朝はしっかり褒め、濡れてしまった日も叱らずに淡々と後片付けをすることがお子様の自己肯定感を守ることにつながります。

Q3. 夜中に起こしてトイレに行かせるのは効果がありますか?

A3. 夜中に起こして排尿させると、睡眠リズムが崩れて抗利尿ホルモンの分泌が乱れ、かえって夜尿が長引く原因になります。夜間に無理に起こすことは避けていただくようお伝えしています。

Q4. 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

A4. お子様の年齢やタイプによって異なりますが、数か月から1年程度かけて少しずつ寛解-症状が落ち着いて出なくなる状態-を目指すことが一般的です。焦らず根気強く継続することが改善への近道です。

Q5. アラーム療法の費用はどのくらいかかりますか?

A5. 夜尿症の診察や検査、処方は通常の保険診療となりマルフクもご利用できますが、アラーム療法はレンタル・購入費用がかかります。当院ではピスコールをおすすめしております。レンタルの場合、送料込みで月額5,000円(最初の4ヶ月まで)〜3,000円(5ヶ月目以降)をレンタル会社にお支払いいただくことになります。

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