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嘔吐

嘔吐は、単なる食べ過ぎやかぜの一症状であることもあれば、中には急を要する重大な病気のサインであることもあります。嘔吐の症状で外来を受診するこどもの多くは重篤な疾患ではありませんが、いくつかの緊急度・重症度の高い疾患を念頭に診療を行っています。

嘔吐の原因

こどもが嘔吐してしまう原因は多岐にわたります。年齢やその時の状況によっても、考えられる要因は大きく異なります。臨床の現場でよく見られる代表的な原因について、いくつか具体的に解説します。

感染性胃腸炎

小児科の診療でもっとも頻繁に見られる原因の一つが、ウイルスや細菌による感染性胃腸炎です。ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスといったウイルス感染が多く、吐き気とともに下痢や発熱を伴うことが一般的です。特に冬場は流行しやすく、家族内で感染が広がることも珍しくありません。ウイルスが胃腸の粘膜に悪影響を及ぼすことで、正常な消化・吸収ができなくなり、体が有害なものを外に出そうとして嘔吐が起こります。嘔吐のあとに下痢がみられることが多く、「酸っぱい」臭いでやや黄色がかった便になることが特徴です。細菌による感染性胃腸炎はウイルス性のものと比較すると、症状が強く出ることが多くて腹痛や下痢がひどくて血便になることもあります。

食物アレルギー

特定の食べ物を口にした後に嘔吐が繰り返される場合、食物アレルギーの可能性を考慮する必要があります。じんましんなどの皮膚症状が出ないタイプのアレルギーもあり、嘔吐だけが強く出るケースも存在します。食事内容と症状の関連性を詳しくお伺いし、適切な検査や指導を行っています。

外科的な疾患や物理的な閉塞

単なる「お腹のかぜ」ではない、緊急性の高い疾患が隠れていることがあります。例えば、腸の一部が隣り合う腸の中に入り込んでしまう「腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)」や、生後数週間の赤ちゃんに見られる「肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)」などです。これらは、胃や腸の通り道が物理的に塞がってしまうため、激しい嘔吐を繰り返します。顔色が悪い、ぐったりしている、血便が出るといった症状がある場合は、一刻を争う対応が必要です。みなさん一度は聞いたことのる「急性虫垂炎(いわゆる『盲腸』)」でも嘔吐がみられることがありますが、実は医師の間では診断が難しいことがある疾患として有名で、腹部の診察所見や腹痛の場所などで鑑別していきます。

頭部への衝撃や脳の病気

転倒して頭を強く打った後に嘔吐が見られる場合は、脳震盪や頭蓋内出血などが疑われます。また、胃腸の症状が全くないのに、朝方に噴水のように吐くといった場合は、脳腫瘍や髄膜炎など、脳の圧力が上がる病気が原因となっていることもあります。このように、嘔吐は消化器だけの問題ではないため、全身の状態を観察することが極めて重要です。

嘔吐によって引き起こされる病気

嘔吐が続くことによって以下の状態のような二次的な問題が生じることがあります。

脱水症

嘔吐によって体内の水分と塩分(電解質)が急激に失われると、脱水症を引き起こします。特に赤ちゃんや小さなお子さんは、体の水分含有量が多く、少しの喪失でも体調を崩しやすいという特徴があります。おしっこの回数が減る、口の中が乾いている、泣いても涙が出ない、目がくぼんでいるといった兆候は、脱水が進んでいるサインです。重度の脱水になると、意識が朦朧としたり、血圧が下がったりする脱水性ショックという危険な状態に陥ることもあります。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

吐いたものが誤って気管に入ってしまうことで、肺に炎症を起こすことがあります。これを誤嚥性肺炎と呼びます。特にぐったりしているときや、意識がはっきりしない状態で吐いてしまうと、咳き込んで吐瀉物を吸い込んでしまうリスクが高まります。吐いた後に激しく咳き込んだり、呼吸がゼーゼーしたりする場合は注意が必要です。

周期性嘔吐症(ケトン性低血糖症、自家中毒など別名あり)

精神的なストレスや疲れ、感染症などをきっかけに、急激に体内のエネルギー代謝がうまくいかなくなり、血中に「ケトン体」という物質が増えて嘔吐を繰り返す状態です。以前は「自家中毒」とも呼ばれていました。一度始まると激しい嘔吐が数時間から数日間続くことがあり、点滴などの処置が必要になることが多い疾患です。

嘔吐の処置や治療法

水分補給のコントロール

嘔吐の治療でもっとも大切なのは、正しい方法での水分補給です。一度にたくさん飲ませようとすると、胃が刺激されて再び吐いてしまうため、「少量ずつ、回数を分けて」飲ませることが鉄則です。当院では、経口補水液(OS-1など)を5mlから10ml程度のスプーン一杯分ずつ、5分から10分おきに与える方法を推奨しています。吐き気が落ち着いてくるまでは、焦らずゆっくり進めることが大切です。ここをクリックすると外来でお配りしている水分補給の方法についてのファイルがダウンロードできます

薬物療法

嘔吐を繰り返して水分補給がままならない場合には、吐き気止めの座薬や飲み薬を使用することがあります。ただし、残念ながら現在処方されている薬物で有効性が明確に証明されているものはありません。丁寧な水分補給を継続している間に徐々に嘔吐が減ってくるのが通常ですが、おしっこが減ってしまい、排尿間隔がどんどん空いてくる場合は、点滴療法が必要になることがあります。

点滴治療

口から全く水分が摂れない、あるいは飲んでもすぐに吐いてしまい、脱水症状が進行していると判断した場合は、点滴による水分・電解質の補給を行います。点滴をすることで、直接血管内に水分を入れることができ、症状が落ち着いた状態へと導くことが期待できます。小学生未満の低年齢のこどもに対しては1時間ぐらいの点滴療法だけでは回復に至らないことが多いため、点滴がまさに必要であれば病院を紹介させていただく可能性が高くなります。

家庭でのケア指導

嘔吐が落ち着いた後の食事の進め方も重要です。当院では、お粥やうどんといった消化の良いものから順に、どのように食事を再開すれば良いかを具体的にアドバイスしています。また、家族内感染を防ぐための消毒方法(次亜塩素酸ナトリウムの使用など)についてはこちら(厚労省のサイトです)をご参照ください。

嘔吐についてのよくある質問

Q1.吐いた後、すぐに水分を飲ませても良いですか?

A1.吐いた直後は胃が非常に過敏になっています。すぐに飲ませると、その刺激でまた吐いてしまうことが多いです。まずは30分から1時間ほど様子を見て、落ち着いてから経口補水液を小さじ1杯程度から始めてください。少しずつ段階を追って量を増やしていくのがコツです。

Q2.夜間に吐いてしまったとき、救急を受診すべき目安はありますか?

A2.何度も激しく吐き続ける、おしっこが半日以上出ていない、ぐったりして視線が合わない、血便を伴う、激しい腹痛がある、といった場合は夜間でも救急を受診することをお勧めします。逆に、吐いた後に顔色が良く、少しずつでも水分が摂れている場合は、翌朝の当院の受診まで様子を見ても大丈夫なことが多いです。

Q3.吐いたものの中に緑色の液体が混じっていましたが、大丈夫でしょうか?

A3.緑色の液体は「胆汁(たんじゅう)」である可能性があります。これは胃ではなくその先の腸で何かが原因で通過障害が起こっているサインである場合があり、外科的な緊急手術が必要な疾患の可能性も否定できません。緑色のものを吐いた場合は、至急医療機関を受診してください。

Q4.吐き気止めの座薬は、何度でも使って良いですか?

A4.座薬の使用には間隔をあける必要があります。通常は8時間以上の間隔をあけて使用します。座薬の効果は限定的です。

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