インフルエンザ
インフルエンザとは?
通称インフルエンザ(インフルエンザウイルス感染症)は、通常のウイルス感染症と比較して、高熱が続くことが多く、気管支炎・肺炎、熱性けいれんなどを起こしやすい嫌な感染症です。
潜伏期間は1-3日と短く、ウイルスに感染すると通常は2日以内に発熱などで発症します。
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型(!)がありますが、一般的に私たちがインフルエンザといえばA型とB型を指します。C型は6歳までに1度は感染し、以降は感染しても軽症で済む「かぜ」の一部として存在すると考えられおり、ここでは扱いません。
例年A型は1月、B型は2月に感染患者数のピークを認めます。A型はさらに2つの型が知られており、1つは2009年にパンデミックを起こしたタイプ、もう1つは昔からずっといる A香港型で、毎年この2つのタイプとB型1つの計3つのインフルエンザが毎年全国的に流行します。
症状について
主な症状は発熱、鼻汁、咳、咽頭痛といったかぜ症状で、他に頭痛、関節痛、下痢、嘔吐などがよくみられます。
概ね1週間程度で治ることがほとんどですが、小児では極めて稀ににインフルエンザ脳症を発症します。これは、全身のけいれん、意識障害などで発症し、生死に関わる状態になったり後遺症が残ったりすることのある恐ろしい合併症です。
また、高熱時に異常行動がみられることがあり、なにもないところを指さして「虫さんがいてる」と言い出したり、「こわい〜!」と泣きだしたり、突然意味なく歩いたり走り出したりする子たちを毎年のようにみます。事故が起こらないように家の鍵はすべて閉めておく、特に最初の2日間は本人から目を離さないなどの工夫が重要です。
高熱時の異常行動については、必ず解熱剤を使用して経過をみていただき、解熱しても異常行動が持続する場合は夜間・休日問わず医療機関を受診するようにしてください。
解熱剤を使用後も異常行動や意識障害が続くときは、インフルエンザ脳症の初期症状の可能性があります。
さらに、気管支炎・肺炎への悪化が起こりやすいことも特徴としてあげられます。インフルエンザンの気管支炎・肺炎では痰のからんだ咳になることが多く、咳がひどいばかりではなく、咳をしていないときも体をつかってしんどそうに呼吸をしているときは注意が必要です。乳幼児では1回/秒=60回/分以上の呼吸回数になっているときは必ず受診するようにしてください。逆に、咳はひどいけど咳をしていないときにゆっくりと楽そうに呼吸している子は、肺の状態はそこまで悪くないと判断してもよいでしょう。
A型とB型は違う?
様々な理由からA型は全国的な流行が起こりやすいことがわかっています。
A型は高熱が続いて重症化しやすく、B型は軽症が多い。というのが一般的によく言われておりますが、小児に関してこれは誤った情報です。いずれのウイルスであっても全身症状が出やすい感染症であることに変わりなく、異常行動などの注意点も同じです。
ある程度データに差があることがわかっているのは、「熱性けいれん」はA型に多く、下痢や回復期に両足のふくらはぎをいたがる「筋炎」を起こしやすいのはB型だということぐらいです。
ただ、後述の抗インフルエンザ薬の効果には差があることが示されています。
治療について
抗インフルエンザ薬を使用しなくても自然治癒が見込まれる感染症にはなります。WHO(世界保健機構)では重症化リスクのないインフルエンザ患者さんに対して、抗インフルエンザ薬を投与することは非推奨となっています。しかしWHOの判断基準はあくまで全世界的にみた公衆衛生としての考え方であり、日本のような特殊な医療体制を前提としていないこと、また日本人は急性脳症が多い民族であると言われていること、抗インフルエンザ薬は重症化の予防に一定の効果が証明されていることなどをふまえると、一人の小児科医としては重症化リスクが無くても、小学校入学未満の乳幼児(低年齢ほど投与を考慮)には投与を検討すべきと考えます。
日本小児科学会が発表している2025/26シーズンにおけるインフルエンザ治療・予防指針における、抗インフルエンザ薬の選択についての表を下記にお示します。学会では表記の年齢に投薬を推奨しているわけではなく、投与する場合の選択薬として挙げている点にご留意ください。
表から言えることは、オセルタミビル(製品名タミフル)はすべての年齢、A/B型に推奨。バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)は6歳未満に非推奨、6歳以上11歳までのA型には慎重投与、B型には提案と、推奨の強さは「推奨」>「慎重投与」>「提案」となっており、オセルタミビルの方が使用しやすい薬剤となっています。
オセルタミビル(製品名タミフル)、バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)、ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、ペラミビル(ラピアクタ注射薬)
当院でもバロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)は乳幼児期のお子さんには原則投与いたしません。また、保護者の方が6歳以上のお子さんへ抗インフルエンザ薬を使用しない選択をされることにについては、その意見を尊重したいと考えてます。
