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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性の皮膚疾患です。アトピー性皮膚炎は単に「肌が荒れている」というだけではなく、強いかゆみによって夜眠れなくなったり、勉強や遊びに集中できなくなったりするなど、生活の質に大きく関わる病気です。以前は「特定の食べ物が原因である」と厳格な食事制限が行われていた時期もありましたが、現在はそのような考え方は一般的ではありません。むしろ、皮膚のバリア機能が低下した場所からダニや食べ物のカスなどが入り込み、それが原因で食物アレルギーを引き起こすことがわかってきました。特に乳児期早期から湿疹が出ているお子さんは、できるだけ早く適切な治療を開始することが、将来のアレルギー連鎖を食い止める鍵となります。

アトピー性皮膚炎の症状について

アトピー性皮膚炎の最大の特徴は、何といっても強いかゆみです。かゆみのために皮膚をかきむしってしまい、それによって湿疹が悪化し、さらにかゆみが強くなるという「かゆみの悪循環」に陥りやすいのが特徴です。湿疹の現れ方は年齢によって変化していくことが多いですが、基本的には左右対称に現れることが一般的です。

乳幼児期のお子さんの場合、最初は顔や頭にじゅくじゅくとした湿疹が出ることが多く、それが次第に体や手足へと広がっていきます。特に耳の付け根が切れてしまう「耳切れ」は、アトピー性皮膚炎を疑う重要なサインの一つです。もう少し大きくなってくると、肘の内側や膝の裏側といった、汗がたまりやすく皮膚がこすれやすい関節部分に、カサカサとした乾燥した湿疹が目立つようになります。

慢性化してくると、皮膚がゴワゴワと厚くなり、色が黒ずんでくることもあります。これを皮膚の苔癬化(たいせんか)と呼びます。また、見た目の湿疹だけでなく、肌全体がひどく乾燥して「鳥肌」のようにザラザラした状態になることも少なくありません。

かゆみの程度は人それぞれですが、夜間に体温が上がるとかゆみが強まり、無意識にかきむしってしまうことで、朝起きると布団に血がついているということもあります。このような症状が数ヶ月以上(乳児では2ヶ月以上、それ以外では6ヶ月以上)続く場合、アトピー性皮膚炎と診断される可能性が高くなります。夜間のかゆみは本人だけではなく保護者の方々の寝不足の原因にもなってしまいます・・

アトピー性皮膚炎の原因について

アトピー性皮膚炎の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。大きく分けると、体質的な要因環境的な要因の2つがあります。

体質的な要因としては、もともとアレルギーを起こしやすい「アトピー素因」を持っていることや、皮膚のバリア機能が遺伝的に弱いことが挙げられます。健康な皮膚は、表面にある角質層が水分を保ち、外からの刺激(細菌、ウイルス、ダニ、花粉など)が侵入するのを防いでいます。しかし、アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、このバリアが壊れているため、水分が逃げやすく、外からの刺激に対して非常に敏感になっています。

環境的な要因には、私たちの身の回りにある様々な刺激物が含まれます。ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、カビといったアレルゲン(アレルギーの原因物質)はもちろん、汗、石鹸の残り、衣服の摩擦、そして精神的なストレスなども悪化させる要因となります。最近の臨床データでは、皮膚のバリアが壊れた部分からアレルゲンが入り込むことが、症状を長引かせる最大の原因であると考えられています。

しかし、何よりも大切なのは「原因探し」に躍起になって過度な制限をすることではなく、壊れたバリア機能を補い、刺激に負けない肌を作っていくことです。まずは身近なスキンケアから見直していくことが改善への近道です。

年齢による症状の違い

アトピー性皮膚炎は発症する時期や年齢によって、症状の出方や特徴が異なります。臨床現場では、主に以下の3つのステージに分けて考えることが多いです。

  • 乳児期のアトピー性皮膚炎・・生後2ヶ月から3ヶ月頃より、頭や顔に赤みやじゅくじゅくとした湿疹が始まります。この時期は乳児湿疹との区別が難しいこともありますが、症状が長引く場合はアトピー性皮膚炎を疑います。
  • 幼小児期のアトピー性皮膚炎・・2歳頃から12歳頃までを指します。顔の湿疹は落ち着いてくる傾向にありますが、首や肘、膝の裏側などの関節部分が乾燥し、硬くなってくるのが特徴です。
  • 思春期・成人期のアトピー性皮膚炎・・顔、首、胸、背中など、上半身に強い湿疹が出やすい傾向があります。長年の炎症によって皮膚が厚くなり、全体的に赤ら顔(紅皮症)のようになることもあります。

また、アトピー性皮膚炎の患者さんは、他のアレルギー疾患を併発しやすいという特徴があります。これはアレルギーマーチと呼ばれ、アトピー性皮膚炎を起点として、食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎へと次々に症状が移り変わっていく様子を表しています。そのため、初期段階のアトピー性皮膚炎をしっかりコントロールすることが、将来の他のアレルギーを予防する観点からも非常に重要です。

当院では、お子さんの年齢や成長段階に合わせ、今どのステージにいるのか、これからどのような経過をたどる可能性があるのかを見据えた治療計画を立てていきます。単に今の湿疹を治すだけでなく、将来を見据えたケアが大切です。

アトピー性皮膚炎の治療法について

アトピー性皮膚炎の治療は、大きく分けて薬物療法スキンケア悪化原因の対策の3本柱で行われます。これらをバランスよく継続することが、症状を安定させるための鍵となります。

薬物療法について

炎症を鎮めるために最も効果的なのは、ステロイドの塗り薬です。ステロイドと聞くと副作用を心配される保護者の方も多いですが、適切な強さの薬を、適切な量、適切な期間だけ使うことで、副作用を最小限に抑えつつ、安全に高い効果を得ることができます。最近ではステロイド以外にも、免疫調整薬や、新しい非ステロイドの外用薬といった選択肢が増えています。

また、かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬の内服を併用することもあります。これにより、寝ている間のかきむしりを減らす効果が期待できます。重症の場合には、注射薬を検討することもありますが、当院ではまずは丁寧な外用指導を基本として、どうしてもかゆみのコントロールが難しい場合には注射薬の治療も提案しています。

スキンケアの徹底

薬で炎症が引いた後も、壊れたバリア機能を補うために保湿剤を使い続けることが不可欠です。当院では「いつ、どれくらいの量を、どのように塗るか」という具体的な方法を詳しくお伝えしています。例えば、保湿剤の量は「フィンガーチップユニット(FTU:大人の人差し指の先から第一関節まで出した量で、手のひら2枚分の面積を塗る)」という目安を基準にします。

また、体を洗う際も、石鹸をしっかり泡立てて手で優しく洗うことが大切です。市販の製品を使う際は、食物成分が含まれているものは食物アレルギーを誘発する恐れがあるため、注意が必要です。不安な場合は、処方された保湿剤を主軸にすることをお勧めしています。

悪化原因の検索と対策

血液検査などでダニやハウスダストへの反応を調べ、日常生活で気をつけるべきポイントをアドバイスします。こまめな掃除や換気、シーツの洗濯など、無理のない範囲で環境を整えていくことが大切です。

症状が消えたあと良い状態を維持するプロアクティブ療法(症状が出る前に定期的にお薬を塗る方法)を継続します。これにより、突然の悪化を防ぎ、結果的に使うステロイド薬の総量を減らすことが期待できます。

アトピー性皮膚炎についてのよくある質問

Q1. ステロイドを塗り続けると皮膚が黒くなると聞いたのですが?

A1. 皮膚が黒くなるのはステロイドのせいではなく、炎症が長く続いたことによる「炎症後色素沈着」が主な原因です。むしろ、ステロイドを怖がって不十分な治療を続けることで、炎症が長引き、黒ずみが残りやすくなってしまいます。正しく治療して炎症を早く抑えれば、皮膚の色は徐々に元の状態に戻っていくことが期待できます。

Q2. 食事制限は必要ありませんか?

A2. 現代の医学では、特定の食物を制限することでアトピー性皮膚炎が治るという考え方は否定的です。むしろ、自己判断で食事制限をするとお子さんの成長を妨げるリスクがあります。検査で明らかな食物アレルギーがある場合を除き、バランスの良い食事を心がけることが大切です。気になることがあれば、当院へご相談ください。

Q3. お風呂で気をつけることはありますか?

A3. お湯の温度が高すぎると、かゆみが強くなったり肌の油分が抜けすぎたりするため、38度から40度程度のぬるま湯が適しています。体を洗うときはナイロンタオルなどでこすらず、たっぷりの泡で包み込むように洗ってください。お風呂上がりは水分を拭き取ったらすぐに(できれば5分以内)保湿剤を塗るのが最も効果的です。

Q4. 季節で注意すべき点は?

A4. 冬場は空気中の乾燥が強いため、秋口から保湿を強化することが大切です。また、夏場は汗による刺激で悪化しやすいため、汗をかいたらシャワーで流すか、濡れたタオルで優しく押さえるように拭く工夫をしてください。季節に応じたスキンケアがお肌に役立ちます。

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