おたふくかぜ
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、ムンプスウイルスによる感染症で、耳の下にある耳下腺が腫れて痛むのが大きな特徴です。特に小さなお子さんに多い病気ですが、周囲への感染力が強く、合併症にも注意が必要な疾患です。おたふくかぜは一度かかると終生免疫が得られますが、予防接種での対策が非常に重要です。
おたふくかぜの症状について
おたふくかぜの代表的な症状は、耳の下(耳下腺)や顎の下(顎下腺)の腫れと痛みです。通常、左右どちらかが腫れ始め、1日から2日遅れて反対側も腫れてくることが多いですが、片側だけが腫れるケースも3割程度あります。腫れは3日から7日ほどで自然に引いていきますが、その間は物を噛んだり飲み込んだりするときに強い痛みを感じることがあります。
また、発熱を伴うことも多く、38度から39度程度の熱が3日から5日ほど続くのが一般的です。熱が出ないお子さんもいれば、高熱とともに頭痛や嘔吐の症状が出る場合もあります。おたふくかぜは、ウイルスが体に入ってから症状が出るまでの潜伏期間が2週間から3週間と長いことも特徴の一つです。腫れが出る数日前から周囲への感染力があるため、気づかないうちに広まってしまうことがあります。
喉の痛みや全身の倦怠感が出ることもあり、食事の際に酸っぱいものや硬いものを食べると痛みが強くなる傾向があります。お子さんの症状が軽い場合でも、周囲への感染を防ぐために、学校保健安全法では耳下腺などの腫れが現れてから5日が経過し、かつ全身状態が良くなるまで出席停止と定められています。診断を受けた際は、しっかりと自宅で安静に過ごすことが大切です。
発熱や喉の痛みが強い場合の対処については「発熱」のページや「喉の痛み」のページも参考にしてください。
おたふくかぜの原因について
おたふくかぜの直接的な原因は、ムンプスウイルスと呼ばれるウイルスへの感染です。このウイルスは感染力が非常に強く、主に飛沫感染と接触感染の2つの経路で広がります。幼稚園や保育園、小学校などの集団生活の中で流行しやすく、特にお子さんの間で広がりやすい性質を持っています。
飛沫感染は、感染している人の咳やくしゃみの中に含まれるウイルスを、周囲の人が吸い込むことで起こります。また、接触感染は、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることで感染が成立します。ムンプスウイルスは唾液の中に多く含まれるため、食器の共用やタオルの使い回しなどでも感染のリスクが高まります。ご家族におたふくかぜの方がいる場合は、手洗いや消毒を徹底することが重要です。
おたふくかぜは、一度感染して発症すると体の中に強い免疫ができるため、二度とかかることはほとんどありません。しかし、耳の下が腫れる病気には、おたふくかぜ以外にも「反復性耳下腺炎」など他の疾患が存在します。これらは別の原因で起こるため、以前におたふくかぜと言われたのにまた腫れたという場合は、異なる病気の可能性を考慮する必要があります。
おたふくかぜの合併症について
おたふくかぜ自体は単一のウイルスによる疾患ですが、ウイルスが全身に広がることでさまざまな合併症を引き起こすことがあります。主な合併症や関連する病気の状態には以下のものがあります。
無菌性髄膜炎
おたふくかぜの合併症として頻度が高く、数パーセントから10パーセント程度の割合で起こると言われています。激しい頭痛、何度も繰り返す嘔吐、高熱などがサインです。多くの場合、適切な処置で回復しますが、入院治療が必要になるケースも珍しくありません。
嘔吐が激しい場合の対応については「嘔吐」のページを詳しく確認してください。
ムンプス難聴
非常に対策が重要な合併症の一つです。ウイルスが内耳を破壊することで起こり、多くは片側ですが、一生治らない高度な難聴になるリスクがあります。およそ1,000人に1人程度の割合で発生するとされ、お子さんの場合は本人が気づきにくいため、周囲の大人が注意して見守る必要があります。
睾丸炎・卵巣炎
思春期以降の男女が感染した場合に起こりやすい合併症です。男性では睾丸の腫れや痛み、女性では下腹部痛を伴う卵巣炎をきたすことがあり、将来の不妊の原因になることもあります。
膵炎
ムンプスウイルスが膵臓に炎症を起こすことがあります。激しい腹痛や嘔吐、背中の痛みなどが主な症状です。食欲不振や腹部の不快感が続く場合は、膵炎の可能性を疑って診察を受けるようにしましょう。
おたふくかぜの治療法について
現在、おたふくかぜの直接的な原因であるムンプスウイルスを退治する特効薬は存在しません。そのため、治療の基本は症状を和らげ、体がウイルスに勝つのを助ける対症療法が中心となります。お子さんの辛い症状を少しでも軽減できるよう、家庭でのケアと合わせて進めていきましょう。
具体的な治療やケアの方法には以下のようなものがあります。
- 解熱鎮痛剤の使用・・熱が高い場合や、耳の下の痛みが強くて食事が摂れない場合に、アセトアミノフェンなどの薬を使用して痛みと熱を和らげます。
- 局所の冷却・・腫れている部分を冷やしてあげると、痛みが和らぐことがあります。お子さんが嫌がらない範囲で、冷湿布や保冷剤(タオルで包んだもの)を当ててあげてください。
- 水分補給・・高熱や痛みで水分が不足しやすいため、こまめな水分補給が欠かせません。スポーツドリンクや経口補水液など、お子さんが飲みやすいものを少しずつ与えてください。
- 食事の工夫・・酸っぱいもの(レモンや梅干しなど)は唾液を出すため痛みを強くします。噛まずに飲み込める、ゼリーや柔らかい煮込みうどん、プリンなどの喉越しの良いメニューがおすすめです。
- 安静・・体力を消耗しないよう、基本的には自宅で静かに過ごします。激しい運動は控え、十分な睡眠をとれる環境を整えてあげましょう。
おたふくかぜの治療において最も大切なのは、合併症の兆候を見逃さないことです。もし「頭痛がひどい」「何度も吐く」「ぐったりして視線が合わない」「耳の聞こえが悪いようだ」といった様子があれば、医療機関を受診してください。
おたふくかぜについてのよくある質問
Q1. 予防接種を受けていてもおたふくかぜにかかることはありますか?
A1. 予防接種を2回受けていても、100パーセント防げるわけではありません。しかし、ワクチンを接種している場合、かかったとしても症状が非常に軽く済んだり、深刻な合併症である難聴や髄膜炎のリスクを大幅に下げたりできるというメリットがあります。
Q2. 大人になってからおたふくかぜにかかると重症化しやすいですか?
A2. 一般的に大人がおたふくかぜにかかると、こどもたちよりも症状が強く出ることが多く、睾丸炎や卵巣炎などの合併症の頻度も高まります。また、仕事への影響も大きいため、未接種や未罹患の方は任意接種を検討することをお勧めします。
Q3. 耳の下が腫れましたが、おたふくかぜかどうかすぐ分かりますか?
A3. 診察での腫れの様子や経過から診断することが多いですが、初期段階では区別が難しいこともあります。また「反復性耳下腺炎」のように、おたふくかぜと似た症状が出る別の病気もあります。当院では必要に応じて超音波検査や血液検査などを行い、診断の精度を高める工夫をしています。
Q4. おたふくかぜのワクチンは何回打つのが理想ですか?
A4. 日本小児科学会では、1歳時と小学校入学前の計2回の接種を推奨しています。1回だけでは免疫が不十分であったり、時間が経つと弱まってしまったりすることがあるため、2回接種することでより確実な免疫をつけることができます。
